電子教科書導入で何が変わるか
~獨協医科大学看護学部様導入事例~

本インタビューについて

電子教材を積極的に活用し,今や採用教科書のほぼすべてが電子教科書という獨協医科大学看護学部様。当時電子化を進めておられた鈴木純恵先生(現三育学院大学教授)から電子教科書導入への強いご希望があり『医学書院eテキスト』を当初より導入いただきました。以来モデル校として学内の環境整備や実習先との協力体制構築を推進していただいております。この大きな変化の裏側をインタビューさせていただきました。

  • 井上ひとみ先生
    (獨協医科大学看護学部 学部長 小児看護学 教授)
  • 板倉 朋世先生
    (獨協医科大学看護学部 基礎看護学 教授)
  • 河野かおり先生
    (獨協医科大学看護学部 基礎看護学 講師)
  • 遠藤 恭子先生
    (獨協医科大学看護学部 基礎看護学 講師)

紙から電子へ―導入のステップ

――いくつかある電子教科書の中から,『医学書院eテキスト』を選ばれた理由はございますか? 板倉 1冊ずつでも契約可能という点です。試験導入の際にも3冊(『基礎看護技術Ⅰ』,『基礎看護技術Ⅱ』,『解剖生理学』)を利用いたしました。実際の導入においては,学生用として紙の教科書で採用しているタイトルをeテキストとしても導入しています(編註:冊子+電子版のご採用)。ただ医学書院に限らずどの教科書を使ったとしても,1冊で授業するのは難しく他の教材で補足する必要がでてきます。たとえば,「eナーストレーナー」といった教材も同じiPadでサブテキストのような形で使っていくことになると思います。
教員用は,1年目から全タイトルを使ってきています。他の科目でどう教えているかを確認できるので,学生がどういうことを学習しているか把握しやすく,とても便利だと思っています。

――導入当時,学内のWi-Fi環境(無線インターネット環境)は整備されていたのでしょうか? 板倉 eテキスト導入の1年ほど前から,電子教材に興味を持たれていた先生方がWi-Fi環境の整備を進めてくれていました。ところが当時の環境ですと,皆で集まった研修会で一斉にコンテンツのインストールを始めると止まってしまうようなことがありました。「研修会までに,各自でインストールしてきてください」とご案内しておいて,集まったら使い方を説明するというような,段取りを決めるのが大切ですね。
2017年にはiPadのモデルチェンジがあり,5月くらいまで新入生のiPadが入らず困ったことがありました。そこで,今年からは学生に各自iPadを用意してもらうことにしました。スペックを伝えて準備してもらうようにするので,この問題はもう起こらないかと思います。また,windows版も使用できるようになったこともあり,iPadかWindowsを搭載したパソコンのどちらかを用意してもらっています。

紙から電子へ―導入のステップ

導入にあたっては,説明会など準備段階の段取りを整えることが重要と板倉先生は指摘する

iPadの使用に慣れるために

――iPadを用いた学習はスムーズに受け入れられましたか? 板倉 学生はスムーズにいきますが,教員のほうが慣れるのに時間がかかりますね。今はスマホを使う先生も多いですが,当時はそう多くなかったので文字の入力に慣れるのでさえ大変でした。
井上 iTexビューア(編註:医学書院eテキストを閲覧するアプリ)のログインキーを打ち間違えてログインできないということもありましたね。
板倉 用語がわからないというのもありましたね。「ホームボタン」がわからない,というような。
井上 今はだいぶスマホを使う方が多くなってきたので,操作や用語には慣れてきていると思いますが,当時は大変でした。
河野 電子教科書の研修会をしても,アプリの場合は説明書を読んで理解するというより「ここをタップすればこう出てきます」という動きを説明するので,とまどう先生方も多かったと記憶しています。

――これから電子化を検討される学校様には,「冊子+電子」から始める,あるいは導入には1年かけて環境整備や研修を進め,皆さんが慣れてから教員施設用を導入するのもよいかもしれません。 板倉 じっくり進めていただくと,変化が緩やかになり受け入れやすいかもしれませんね。

――学生に対しては,入学後すぐに情報リテラシーの授業があると伺っています。 板倉 情報リテラシーについての教育はいろいろなタイミングで実施しています。入学後のオリエンテーションでも話が出ますし,1年生に対してSNSの使い方に関しての講演会を行ったり,実習に入る前にも注意喚起する機会を持っています。

――SNSをめぐるトラブルを聞くことがありますね。 板倉 以前はありましたね。Twitterなどで「実習先がたいへん」などと書いてしまったり。そういう部分は強調してオリエンテーションをしていることもあってか,最近はそのようなトラブルは聞きません。実習前にマナーを含めたオリエンテーションを行い,問題があれば注意を促すようにしています。

動画は技術学習に大きな効果

――先生方から見て,電子教科書を導入してよかったところや学生さんの反応はどうでしたか? 河野 動画を使った学習の効果を感じています。紙の教科書から動画を見る場合,印刷されているQRコードをスマホのアプリなどで読み取っていたので,当時は動画をみる環境が整っていない学生がいくらかいました。今はあたりまえのように皆よく動画を見ています。だから技術の習得が早い。昔は細かく手順を教えなければいけなかったのが,自分たちですぐイメージがつけられるということですね。正しく覚えているか確認する必要はありますが…。
井上 昔は「みんなで(技術動画を)見る」ためのいい道具がなかったのですが,教科書の中に動画があるととても便利ですね。文字よりも目で見たほうがわかりやすいものもありますから。

――iPadならではの動画の活用方法はありますか? 河野 iPadを使って学生同士が演習を撮影して,それらを教科書の動画と比較することで技術が正しく実践できているか確かめてもらっています。ただし,撮影した演習の動画は評価対象としていません。あくまでも学生同士の確認のために使っています。

――そのほか学生さんがiPadを活用されていることはありますか? 遠藤 例えばレポートです。学内の学習支援システムから課題を配信することが多いのですが,グループワークの発表資料をつくる課題を出すことがあります。そういった場合にiPadでPowerPointを作成するなど電子教科書以外にも活用しているようです。国家試験のアプリを学生にすすめているので,そういった教材も学生自身が探して使っています。

動画は技術学習に大きな効果

河野先生(左)と遠藤先生(右)は,動画を利用することで技術学習に大きな効果があると話す

実習にも持っていける?

――実習の際にiPadを病棟に持っていくと伺っています。 井上 実習先の病棟にiPadを置く場所を作ってもらい,必要に応じて調べものに使っています。以前は紙の教科書を病棟に置いておくようなケースもありましたが,最近ではずいぶん減りました。
板倉 実習先への説明はもちろん必要です。毎年開催している実習連絡会・説明会の際に,当校が医学書院eテキストをiPadで使っていることを話し,実習中に持参し使用する了解を得ています。Wi-Fiなど電波を発しないことを説明すれば,ダメと言われたことはないですね(編註:機内モードといった設定によって,電波を発しないモードにすることが可能)。ナースステーションか学生がカンファレンスする部屋で使用するようにしていますので,トラブルになりそうな写真を撮る場面はありません。さきほどお話が出ましたが,実習前のオリエンテーションで情報リテラシーの研修をして注意を促しているので,カルテを撮るといった問題のある使い方はしていないようです。
井上 ただしiPadはナースステーションに置かせていただいても,高価なものなので責任は学生にあるということは,実習先と学生ともしっかり確認しておきます。でもそれは紙の教科書だって同じことです。あとは,病棟に置けるスペースがあるかの確認。そのまま置いておくわけにはいかないので,入れ物はこちらで準備しています。
板倉 今は臨床の先生方が医療現場でiPadを使ったりしますから,実習でも当たり前に使えるようになってくるのではと思います。
井上 本当は病棟でもWi-Fiがつながっているとよいですね。例えば,小児に検査の説明をするのに,紙芝居や手書きの資料を準備したりしたものですが,あらかじめ作っておいた動画やスライドをインターネットで共有する方法も考えられます。もしかしたらこれからそういう方向にいくのではないか,そんなことを思っています。

電子教科書を使う環境は年々よくなっている

――ある学会で医学書院eテキストを導入している学校の先生方にアンケートを実施しました。導入がうまくいくか半信半疑だったが学生が活用してくれた,という声が多く挙がりましたがいかがですか? 河野 今の学生は扱いなれていますね。導入当時の学生と比べても全然違うと感じます。機器(iPad)も進化していて,タッチペンでメモを書き込んで使っている学生もいるようで,以前ほど教科書が紙である必要はなくなっているようにも思います。インターネット環境がよくなったという点も,電子教科書が使いやすくなった要因だと思います。各家庭のWi-Fi環境もよくなっていますし,当校の寮も以前は部屋の外でしか利用できなかった状況が改善されました。

電子教科書を使う環境は年々よくなっている

まず教科書で基礎的な知識を身につけることが,情報を取捨選択するうえで重要と話す井上先生

――導入いただいて5年になりますが,講義スタイルや学生の学び方に変化をお感じになられますか? 板倉 これからますます講義の仕方が変わってきて,反転授業が進んでいくと思います。「ここからここまでやりますよ」「はい,きょうは何ページ」という授業の進め方ではなくなってきています。以前と違うのは,予習や復習もシラバスの中に入れるようになってきている点です。「教科書の何ページから何ページを読んでまとめておいてください」と伝えて,学生が自ら教科書を読んで学習することが必要になっています。

井上 昔は教科書の内容を学習することが主体だったと思いますが,現在は自分で調べながら学習する必要性が高まっています。ただし,すぐにスマホで検索できるのは便利でよいのですが,ネット上にはエビデンスの確かでない情報もあふれています。教科書で知識を身につけたうえで,必要な正しい情報を学生自らが見抜いていく必要がありますね。

――予習・復習,自己学習のために教科書を見る時間が多くなりますね。その点では,持ち運びやすい電子教科書はとても便利ですね。本日はありがとうございました。

お忙しい中ご協力ありがとうございました(左から板倉先生,井上先生,河野先生)。
お忙しい中ご協力ありがとうございました(左から板倉先生,井上先生,河野先生)。

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